総合診療医

【福司山先生の連載ブログ】ノロウイルスについて

総合診療医の福司山先生による連載ブログコーナー

【第4回目】ノロウイルスについて

ノロウイルスは冬に感染しやすい感染性胃腸炎の原因となるウイルスの一つです。このウイルスは感染力が強く、家庭や学校、職場などで集団感染が発生しやすい特徴があります。

 

【症状】

ノロウイルスに感染すると1~2日後に吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状が出現します。感染しても発症しない人や、症状が軽い風邪程度の人もいます。これらの症状が1~2日続き、治癒しますが、症状が強い場合は、水分が足りなくなり、脱水症状を引き起こすことがあります。

 

【感染経路】

① 経口感染
ノロウイルスに汚染された食品を加熱不十分で食べた場合、感染が起こります。また、ノロウイルスに感染した人が調理することによって、料理にノロウイルスが付着し、それを食べることによって感染を引き起こします。
② 接触感染
ノロウイルスが付いたドアノブやタオルなどを触り、その手で口を触るとノロウイルスが体内に入り、感染します。
③ 飛沫感染
感染者の嘔吐物や糞便が床に飛散した際などに、近くに居て、ノロウイルスの含まれた飛沫を吸いこむことで感染します。
④ 空気感染
感染者の嘔吐物や糞便が乾燥して、ノロウイルスが空気中に飛び散り、それを吸い込んで感染することもあります。

 

【予防】

① しっかり手を洗う
手洗いは、手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。トイレの後や食事を食べる前に、石鹸でよく手を洗いましょう。アルコール消毒だけは不十分です。

② 食品をしっかり加熱する、調理器具を消毒する
ノロウイルスは熱に弱いので、ノロウイルスの汚染のおそれのある食品は85~90℃で90秒以上加熱して食べてください。調理器具や食器は、洗剤などで十分に洗浄した後に85℃以上の熱湯で1分以上加熱するか、塩素消毒液に浸して消毒しましょう。

③ 環境の消毒、換気
感染者の嘔吐物やオムツを処理する時は、使い捨てのマスクや手袋を着用し、ビニール袋に密閉して捨てます。感染者が触った物や吐いた場所は、塩素消毒液を使って、掃除をしましょう。感染者とのタオルや食器の共有も避け、こまめな換気も心掛けてください。

※塩素消毒液は、次亜塩素酸ナトリウムがよく使われます。家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。

 

 

【ノロウイルスに感染した場合】
嘔吐や下痢による脱水を防ぐために、こまめに経口補水液を飲み、安静にしましょう。また、症状が治まってからもしばらくの間、ノロウイルスは便から排出されますので、引き続き予防や消毒が必要となります。ノロウイルスはワクチンや抗ウイルスがなく、通常は自然に回復しますが、乳幼児や高齢者、免疫が低下している方は症状が重くなりやすいため、早めに医療機関を受診しましょう。